すきやき
掛川真弓
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創立50年。奥信濃で牛肉の味を届ける
「故郷」「朧月夜」などの唱歌を生み出した高野辰之の出身地でもあり、りんごの産地としても有名な信州中野駅から徒歩5分。瓦屋根の入り口が印象的な店舗が「すきやき」さんです。
ストレートな名前の通り、りんご和牛信州牛のすき焼きをいただけるお店ですがそれだけではありません。りんご和牛信州牛の焼き肉、りんご和牛信州牛のしゃぶしゃぶと、正にりんご和牛信州牛をふんだんに楽しめるお店なのです。
牛肉の生産地である信州ですが、実は牛肉を専門に食べられる店は多くありません。近年までは信州で育てられた良質な牛肉は、首都圏や関西に多く供給されてきました。りんご和牛信州牛については、信州よりも首都圏や関西といった県外の方が早くその価値を評価してきたといえます。
そんな地元信州で店を構えて50年。いまや、奥信濃でりんご和牛信州牛を楽しめる店として観光客や地元の方に愛されるようになった「すきやき」のおかみさんである掛川真弓さんにお話しをお聞きしました。
地場産を活かした信州ならではのすき焼きを
「りんご和牛信州牛は脂の甘みがしっかりしていますね。ですので、うちではすき焼きのタレの甘みをそれに合わせています。気にせず薄くタレを作ってしまうと肉の甘みに負けてしまうんです」と掛川さん。
きめ細やかなサシが美しいりんご和牛信州牛を、まずは牛脂を溶かした鍋で軽く火を通して、鮮やかな色になったところにタレを流し込みます。肉の赤みがみるみるうちにジューシーな焼き色に。ぐっと唾を飲み込む瞬間です。
「さあ、どうぞ」という掛川さんの言葉に飛びつくようにお肉をとって、溶き卵とからめて口の中へ。ほうばった瞬間に肉の旨みと甘みが口の中に広がり、かむごとに爽やかな香りが感じられます。肉質もやわらかいのにしっかりしたボリューム感があって、それもまた口福。
「りんご和牛信州牛はやわらかいのに、しっかりした肉質を兼ね揃えているのも特長ですね」と掛川さん。
「すきやき」さんで供されているりんご和牛信州牛は、当サイトの「育てる人」でもご紹介している高井富士畜産の牛肉。あの信州らしい環境の中で丁寧に育てられたりんご和牛信州牛をこのお店ではとても大切に料理しています。
せっかく地元の牛肉を使うのだから、野菜も地場産にしよう、信州らしさを味わってもらうために多彩なキノコを取り揃えよう―。
すき焼きのお皿の中はこのお店の思いがいっぱいに詰まった形のようです。
信州生まれの記者も知らなかったのですがキノコは鮮度が命だそうで、収穫後に時をおかずに食べるのが美味しさの秘訣だそうです。11月の取材時にお皿に盛られていたのはエリンギ、やまびこしめじ、えのき、山茶茸の四種類。このために地元のJAと協力体制をとって、信州ならではのすき焼きを提供しているそうです。
「やっぱり地場産の採れたてがほしくて、今の時期はネギも自分の畑で作っちゃいました」と笑う掛川さんです。
無駄なく、美味しいところを全部
優れた牛肉の産地なのに、牛肉を食べる文化は関西などと比べてやや立ち遅れていた信州。今でこそりんご和牛信州牛は地元でも認知度があがり、お祝いの場や記念日に食べられるようになりましたが、こつこつと営業を続けていくなかで「どうしたらこの素晴らしい食材を無駄なく使うことができるだろう」と切磋琢磨の日々だったそうです。
「すきやき」さんの人気メニューである牛スジ豆腐はそんな日々から生まれたメニュー。りんご和牛信州牛をすべて美味しくいただきたいと、最初はスタッフのまかないとして牛スジを作っていたそうです。それが驚くほど美味しい。こんなに美味しいならと研究を重ね、牛スジ豆腐をメニューに入れてみたらあっという間に人気の一品になったとのこと。
「素材の良さはそのまま味に出るということがとてもよく分かる一皿になりました」と掛川さん。
同じように牛肉のしぐれ煮も半日以上かけて丁寧に煮ることでやわらかく滋味あふれる人気メニューになったとか。
りんご和牛信州牛を深く知るお店だからこそ、無駄なく美味しいところを全部味わっていただきたいという思いが「すきやき」さんには溢れています。
有限会社すきやき
住所:長野県中野市中央1-11-20
電話:0269-22-2919
ホームページ:http://www16.ocn.ne.jp/~fuku-suk/