高井富士畜産組合
月岡昭二
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信州の空の下で育てられた「りんご和牛信州牛」
下高井郡山ノ内町の山をぐんぐん空に向かって登っていくと、山の中腹に牛舎が見えてくる。それが高井富士畜産組合です。
高井富士畜産組合は北志賀高原・高杜山の山麓で数百頭の黒毛和牛を「りんご和牛信州牛」に育て上げるべく、厳しい管理とあたたかい愛情をもって肥育されています。
信州は牛の生産地として長い歴史を持つという知識はあっても、日々の生活の中でなかなか見慣れた信州の自然を悠々と歩く牛を見ることはありません。
それが、この高井富士畜産組合では信州の山をそのまま活かして広大な放牧場を開拓。サッカー場が何面もとれるかのような敷地の中をりんご和牛信州牛が気持ちよさそうに散歩しています。いったいどんな生産者なのだろう、と取材者の気持ちもわくわくする気分です。
信州古来の伝統と、革新の技術の融合
今回取材させていただいた月岡さんは、平成20年度信州食肉マイスターとして表彰されたこだわりの生産者。
質の高いりんご和牛信州牛はさまざまなところで評価され、すきやきの有名店やホテル、レストランなどで使用されています。
そもそもりんご和牛信州牛に与えられる 「りんご入り発酵飼料」にはりんご、おから、酒滓といった地域特産の副産物が有効に使われており、牛にとってみればバランスのとれた自然食・栄養食を食べているようなもの。
高井富士畜産組合では地元の製菓会社から特別にフレッシュなりんごを得て、りんご和牛信州牛に与えています。
りんごを食べさせると良い牛が育つことは昔から奥信濃では広く知られており、その伝統を優れた技術によって現代に蘇らせた 「りんご入り発酵飼料」と、フレッシュなりんごの相乗効果が牛たちの食欲を向上させ、脂がよくのった良質な肉になるそう。高井富士畜産組合の育てるりんご和牛信州牛の評価にもつながっているようです。
「やっぱりフレッシュなりんごは喜んで食べますね。彼らにとってはまた違うご馳走みたいです」と笑う月岡さん。
最高の品質の牛を育てるという気持ちはもちろんですが、とにかく育ていている牛たちを家族のように思っているのがとても伝わってきます。
すべては最高の牛を育てるために
山の斜面を活かした放牧場には妊娠した牝牛が放たれています。
取材時には6頭ほどの牝牛たちが放牧地でのんびりと草を食んでいました。
歩くだけで息が切れるほどの広大な放牧場を開拓するだけでも大変だったはずですが、これも月岡さんに訊ねてみると「牛のストレスを少しでもなくしたかったから」と一言。
高井富士畜産組合では「牛のストレス低減」が徹底して実施されています。
全期間生菌剤の投与、全頭除角、牛舎にはクラシック音楽を流すといったさまざまな取組みも牛の日々のストレスを少しでも減らしたいため。
リラックスした牛たちは表情が明るく、飼料をよく食べるようになります。
それがとてもよく分かるのが牛舎に入った瞬間です。
本当に手間をかけて大切に育てられた牛たちは人に警戒心を持ちません。
普通ならば見知らぬ人間が牛舎に入ったとたんに牛たちはざわめきたち、怯えを露わにします。それが、ここの牛舎では逆に興味津々。
「なんだなんだ、何かくれるのかな?」とばかりに見知らぬ取材者の腕や服をなめるほど。
本当に牛の立場になって育てられているんだと実感する瞬間です。
信州の豊かな自然のなかで心からのびのびと過ごした高井富士畜産組合の牛たちは、食欲旺盛で健康的に成長するからこそ、安心・安全でおいしいりんご和牛信州牛に育ってくれるのです。
高井富士畜産組合
住所:下高井郡山ノ内町大字夜間瀬字北原10701
電話:0269-33-6029