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りんご和牛信州牛の魅力

育てる人

飯沼牧場
飯沼雅樹(左) 飯沼頼久(右)

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清冽な信州の大地で牛を育てる

松本インターを降り、上高地方面に向かうと空がどんどん高くなり、目の前が開けてくる。
そんな広大な風景のなかに北アルプスを背にした飯沼牧場がある。
いかにも信州らしい伸びやかな景色と、澄んだ空気が気持ちいいと思いながら車を降りると飯沼親子が出迎えてくれた。
飯沼牧場は飯沼雅樹さんで三代目。初代は現在とは別の松本市内で飼育を始め、手狭になった折りに二代目の頼久さんが現在の松本市梓川に移した。
周囲に住宅がなく、畑やりんご園が広がる土地でのびのびと飼育に専念することができ、業務が発展するにつれて牛舎もひとつまた一つと増やしていき、今では240頭を飼育するに至っている。

「牛の飼育にとって長野は空気がいい土地ですね。カラッと乾燥している。ほかと比べて湿度が低くて、夏は昼は暑いけど夜は涼しい。牛は体温調整が苦手なので、長野は良い牛を育てるに向いている土地だと思います」と雅樹さん。

牛たちとのコミュニケーション

まるで学校の先生のようだ。
雅樹さんの牛への関わり方を見てそのように思った。

「今日はお前元気な目をしているな」「お、調子よくなったじゃないか」と一頭一頭に声をかけ、時には牛の頭や鼻を撫でながら様子を見ている。もちろん、プロとして飼育している牛たちの状態を確認する意味があるのだけれど、彼の口からこぼれる語りかけのトーンが牛たちとのコミュニケーションを主にしているように響くのだ。
甘やかすのではなく、放置するのではなく、互いの関係性を保ちつつ、一頭一頭を丁寧に把握する雅樹さんの接し方が印象的だった。

「牛の生理にかなった飼い方をしてあげたいと思っています。牧草で腹づくりしてあげて、筋肉が育つときはたんぱく質を与えていますが、やっぱり一頭一頭違いますよね。食事の時間になるといつもはトコトコ寄ってくる牛が食べに来なかったり。そういう時に「あれ、ちょっとおかしいな」と気づけることが大切だったりするんです」と雅樹さん。
数年前から飼育のほかに繁殖も始め、あの牛とあの牛はここで生まれたんですと、自分たちの手で作り上げた牛舎でそんな風にいう雅樹さんはやっぱり学校の先生のように見えた。

りんご和牛信州牛はあっさりとしているのに、深い味わいがある

飯沼牧場で育てられたりんご和牛信州牛は東京、名古屋、大阪といった全国の牛肉消費の盛んな地に出荷されている。
飯沼さん自身、京都の老舗のすきやき屋に足を運んで「こんなにも美味しい肉だったか」と驚いたこともあるという。肉を熟成させて、りんご和牛信州牛がもつ美味しさをより深く出している料理に感心したそうだ。

「りんご和牛信州牛はあっさりとしているのに、深い味わいがあるんですよね。口の中にいつまでも旨みと風味が残るような」という雅樹さんの言葉に二代目である頼久さんも頷いていた。

昭和のオイルショックの後に牛肉の需要は右肩上がりで伸び続け、飯沼牧場の規模も拡大しつづけた。増設する牛舎は自分たちの手で作り上げ、さまざまな面でもコストを下げる努力も続けている。良質なりんご和牛信州牛を育てるために、自分たちでできることは自分たちの手でやろうという意識が牧場の全てから感じ取れる。
「紆余曲折もあったけれどね」と笑う二代目の頼久さんになかば無理やりお願いして親子二人の写真を撮らせていただいた。松本の高い高い青空の下で、お二人の笑顔はとても似合うんだなと思いつつシャッターを切った。


飯沼牧場
住所:長野県松本市梓川梓上ノ原4682
電話:0263-78-2666

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